「レタッチ」と「現像」は別の言葉 肌レタッチについて
Twitterなんかを見てると、ノーレタッチです!とかレタッチしました!とかいうのが、蔓延していてIT系カメラマンとしては、背中が痒るなることがしばしばありあます。
注意)デジタル写真の話です。
そもそもレタッチと現像とは別の言葉です。
レタッチとは
撮影した写真などの画像データを目的にあわせて加工したり、修正したりする作業。retouchとは英語で加筆、修正をさす。画像データはコンピュータ上のアプリケーションで読み込み、作業を行う。フォトレタッチや写真編集とよぶこともある。
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この加工と修正という言葉がミソです。
現像とは
デジタルカメラで撮影・記録した RAW データを専用のソフトウェアで処理することを指す。銀塩写真でフィルムや印画紙に記録された「潜像」を目に見える「顕像」にする処理を現像と呼んでいるわけだが、デジタル写真の世界でもそれになぞらえて、こう言っている。
https://kotobank.jp/word/%E7%8F%BE%E5%83%8F-60793
まさに書いてある通り、RAWデータを処理することを昔の文化に準えて現像と呼んでいるわけですが、実際は「RAW現像」が正しい言葉ですね。JPGも現像できないわけじゃないのですが、現像と言われて1段階目にイメージされるのはRAWです。
すごいわかりやすいように過程を追っていったほうがいいかもしれません。
まず、写真を撮ります。基本的にはこの時RAWで撮る形ですが、JPGでも大きなファイルであればとりまOKかと。
次に家に帰り、PCのLightroomやCapture oneという先の現像の時に解説されているRAW データを専用のソフトウェアで写真を読み込みます。
上の画像は何も処理を施してない「撮って出し」という生データです。ここでまず現像の工程に入りますが、すごいわかりやすくいうと「下地処理」です。お化粧するときにしますよね?あれです。とはいっても僕は次の状態で納品することがほぼほぼです。それは下地というのは世に出すための下地とも捉えれる部分で、ここでポートレート写真としては100%完成します。レタッチはそれに20%の幻想を加える作業です。
次に現像の工程でRAWファイルをJPGに書き出せる(扱える状態)に持っていくのですが、この時に基本的には「写真の調整」を行います。色味が予想しているものでなかった場合や、最近では、この段階で色々と触れてしまうので、レタッチと混同しやすい。
こちらが明るさや色味を多少動かして書き出した「現像」後の写真です。今はどのソフトでも色味の調整や、なんならレタッチに似たことができてしまうので、尚更混同しやすいですが、基本的には、ポートレートにおいて人物の肌を補正することや表情を変更することなどはレタッチの領域になると思われます。
次の工程からはレタッチに入るのですが、まずこの写真の被写体さんはぶっちゃけ触るところがほぼないです。本来陰は肌が死ぬ場所なんですが、多少明るさを変えるだけで完成図に持って行けてしまってます。僕個人もこの画角で顔がこのサイズ感であればこれ以上レタッチは必要ないと判断してレタッチ自体をしません。これがもっと顔によっていたり、肌のコンディションが悪いっすっという話ならやるかもですが、100回に2回ぐらいですかね。
さて、横道に外れてしまったのですが、レタッチの工程です。まずは基本の下地は終わっているので、化粧でいうところの「化粧下地」です。
左が現像のもので、左が1段階目のレタッチを行なったものです。わかりやすく雰囲気変わったかと思います。(気になる人は拡大してね)この工程では、肌のトーンの平均化、ほうれい線やシワなどを薄くしたり無くしてしまったり、ほくろやニキビの削除、肌にかかってきた要らない髪を削除など、肌の質感を残しつつ本来光の当たる場所であればそう見えるであろう状態に持っていくようなイメージで行います。
僕はアップの写真でないなら、やってもここまでかなという印象です。これでも正直ポートレートとしては違和感が出てくるという人もいると思います。まだ先があります。通常であればここから「ハイライター」の工程で終わっちゃうのですが、一応先の工程もあるよーとだけ伝えておきます。
次の工程は、「ファンデーション」です。肌は今平均化されていますが、肌の質感は残されているので、それをさらに隠すような工程になります。
あー、うん肌綺麗な人でやりすぎて違いがわからんすまん。拡大したらわかるかもなんですが、肌の質感を軽く殺してます。
これならわかるだろうか・・・下がファンデーションした結果の写真。
ちょっと広告とかAIとかの肌感に近付いていってると思う。陶器肌と言われるようなものでしょうか。次の工程は「コンシーラー」なんですが、正直絶対いらないので、すっ飛ばします。最初の下地作りで消せなかった肌荒れや、傷などを消す工程ですが、見ての通りすでにキレイキレイなので、必要ないです。
その次の工程は、肌を均等化していったことで、ハイライトが死んでます。要するに鼻筋の陰影がなくなっているので、「ハイライター」の工程に入ります。
はい、鼻筋にハイライトが入ったことがわかるでしょうか。僕は正直化粧に詳しくないし、若干感覚でやってしまっているのですが、ここも本来めっちゃこだわってもいいところかもです。
最後の最後に、「目のレタッチ」が残ってます。今までの経験上、趣味でやるポートレートでここまでやったことはないです。お仕事でもやる時やらない時があるレベルなので、もしかしたらここはコスプレ界隈の方が知識深いかもです。
はい完成系です。白目が白くなったことがわかるでしょうか。白目って現像の段階で雰囲気をつけていくと、白くならないので、ここで戻してあげる工程になります。でも正直いらんw
では、現像の段階とレタッチ最後の段階で見比べてみましょう。
どうでしょうか。左が「現像」右が「レタッチ」になります。超超個人的なことを言うなら僕は左の方が好きです。ポートレートはできるだけその人の全てを丸っと撮りたいので、年齢や意図さえもレタッチしてしまえる右はちょっとだけどうなんだろうなと言う感覚です。写真を見て、実は左の方が表情を読めるし、雰囲気が伝わるんですが、これは好き好みですね。
さて、現像とレタッチの違いはわかってもらえましたでしょうか。昨今現像アプリがめっちゃできることが増えたので、境界線が甘くなっているのはわかりますし、レタッチャーの方が現像しないのかと言われれば違うので、わかりにくい部分ですが、昔ある人が「レタッチと現像をごっちゃにしてると、カメラ勉強もうちょっとしたほうがいいよ?と言われかねない」と言う話をしてくださったのを今も覚えています。
僕らポートレートをとる人間がレタッチをする時はどんな時かと言うと、顔ドアップの場合が多いです。今回程度の距離感なら現像だけで終わるパターンが99%です。あとは今回のように陰の中と言う肌を見せるにはよくない環境に入った場合でもあり得ますが、それでも基本はいらないかなぁ・・・
例えばこの写真、現像しただけの写真です。もちろん現像の段階で肌が綺麗に見えるような発色のバランスはとっているのですが、レタッチするかと言われたら、100%しませんw。しなくても十分過ぎるほど綺麗です。まぁ専門的な話をしちゃうと、これは十分な光が確保されていて、毛穴の中にまで光が入っていてさらに反射して、凹凸が見えない状態になっている普段の状態なので写真のコンディションはいいという状況です。芸能人がライト欲しがったり、配信者がリングライト欲しがるのは同じ原理ですね。
全部の写真をレタッチしたらいいんじゃない?そんな声も聞こえてきそうですが、僕には難しいです。そもそも納品をかなり早いペースでやっているのでそれだけでも優勝ものなんですが、先にもいった通りレタッチをしてしまうと失われるものもあるので、個人的にはアップの写真ぐらいでいいんじゃないかなぁと言う感覚です。時間も鬼のようにかかりますしね。では。
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